第93章

神崎吉弥は書斎でいくつかの案件を片づけていたところ、木下が「お客様です」と告げに来た。

「誰だ」

木下は首をひねる。

「はっきりとは。ただ、軍部の者だと名乗りまして……用件は紬様に関わる、と」

神崎吉弥は眉間に皺を寄せた。軍部――?

脳裏に浮かぶのは、紬の生まれつきの怪力だ。素手で柵をへし折り、ガンガン大槌を振り回す、あの規格外。

軍部がわざわざ訪ねてくる理由など一つしか思いつかない。

――紬の力が、表に漏れたのか。

神崎吉弥の顔色が沈む。

「通せ」

ほどなくして、木下が男を連れて戻ってきた。

黒いレザージャケットの男。その背後には部下らしき人物が一人、軍人特有の硬質な...

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